加賀藩の秘薬「紫雪」   

2011年 09月 15日

  金沢では1月から2月にかけてよく雪が降る。来る日も来る日も繰り返し
 降ってくる雪の中で人々は春の訪れを待ち焦がれる。
  空は鉛色で日本海からの強い風が吹いてくる。そんな雪と風がやんで、
 夕焼けが近くの雪の降り積もった山々を照らす事がある。
  空は茜色に、山肌は紫色にうすく染まったりします。そんな季節を
 待って「紫雪」は作られるのです。
  1月の寒に入るのを待って準備はされます。もともとこの処方は前田家
 五代藩主綱紀公(1635−1724年)が藩内の薬種商に製造を命じ
 る形で作らせたものです。当時は藩の典医の監督のもとで製造が行われ
 ました。
  先ず、大なべに水を7分目位張り、下から火力の強い炭火をおこし煮沸
 させます。あらかじめ用意しておいた黄金100両をお湯にいれます。
 同時に寒水石、石膏、滑石、磁石も併せて煎じます。
 2時間ほど煎じてから、今度は動物薬のれいよう角、犀角、青木香、
 沈香、丁香、玄参、升麻、甘草を一袋に入れ40分程煎じる。
 先の黄金と石薬と動植物の袋を引き上げる。すかさず朴硝、硝石末を
 入れ。煎じたエキスが焦げないように4人位の人手でかきまわす。
 もちろん、鍋の下は火力の強い炭火がこうこうと起こっている。
  一気呵成に仕上げないと薬にはならない。職人技の見せ所でしょう。
  出来上がった紫雪の元は木製の器に入れ目張りをして、一晩保管
 します。翌朝、この紫雪の元を取り出し、朱砂と麝香を加え仕上げ
 ます。あの雪山に輝く夕日を思い出しながら、朱をいれていきます。
 仕上げた紫雪はさらに篩いにかけ、最後の仕上げをします。この間
 暖房はされません。気温は0℃位でしょう。
  この「寒」の季節をはずれて製造すると製品は固まって、紫雪になり
 ません。さらさらと紫の雪のような薬、それが「紫雪」なのです。
 この薬も、もう金沢では製造されていません。綱紀公(松雲公)
 が人々の健康を願って製造を命じた薬も、歴史のかなたへ行ってしまい
 ました。諸行無常は人の世の習いとはいえ、一抹の寂しさを禁じえ
 ません。
 今、日本で紫雪は製造してませんが、お隣中国では麝香を養殖して人口麝香
とすることで製造を続けています。
e0229156_11241962.jpg

[PR]

by kanpousinise | 2011-09-15 11:25

<< 不眠症の漢方薬<パート2> 昭和日本漢方の大御所 >>